MOTOHIDE TAKAMI

Biography

高見 基秀

作品の自立を考えるとき、その柱として作者の感性や感覚のフォーカスされているものが多く存在するが、一部には神話のように信仰されている現実があると私は感じている。
 
また、作家というフィルターを通じて見る作品というのは、無垢で純粋な見方に支えられた類い稀なる価値や時代性を持つもの、という考え方に私は疑いを持っている。
 
どうして自分はそのような考え方をしてしまうのか。
 
一つは絵を描く側の人間であることも関係していると思う。
 
 
美大などデッサンの授業では、物の構造的な理解が本質的な要素をつかむことにつながると教えられる。
 
しかし現実に目を向けると、そのような構造を捉えて本質に迫ろうという見方をしている作家はどのくらいいるのだろう。
 
ニュースなど見ても何が正しく、何が間違っているのか判断できない状況というのはいくらでもある。
 
いかなる根拠を持って自分の判断を是とするのか。
 
ここに作家というか人としての物事の本質を把握することの難しさがある。
 
この困難さは私たちの日常の解釈の仕方を麻痺させ、他者への共感や関心を薄れさせる原因になっているのではないかと思う。
(それは人の能力的な限界の話であり、それが良い悪いということはここでは問題にしない)
 
 
このような視点で見れば、作家だけが特別に先見性があり、能力が高いということはないというは明白だ。
 
ある一つの方向性について能力の瑕疵があるということは、そもそも作家という存在が不完全なものである証左でもある。
 
こうした自分の実感と、作家や作品への世間一般の評価の乖離が、おそらく前に述べた疑いにつながっているのだと思う。
 
私は作家である自分の感性を過小評価しているわけではないが、私の作品づくりはそのような前に述べた前提から始まっている。
 
それは他者に対する関心を持ちたくても持てない限界を、解像度が低く単純化されたモチーフで描くことで構造的に作者の視線として同期させるという試みである。
 
この簡略化の見立ては、作者の問題でありながら当事者として誰もが当てはまる。
 
何故ならば先にも述べた通り、人は物事の本質を客観的に理解し、全ての事象について興味関心を持つためのリソースが圧倒的に不足しているからだ。
 
私の作品は建設的に何か問題を解決したりはしないが、この不完全な作家の目から見える世界を覗く事で、人のあり方や関心を持つことの隘路のようなものを感じていただければ幸いである。
 
 
プロフィール
 
1986  石川県生まれ
2010  富山大学芸術文化学部芸術文化学科造形芸術コース卒業
2012    東北芸術工科大学芸術工学研究科芸術文化専攻洋画領域修士課程修了
 
 
展示歴
主な個展
2019   「Motohide Takami: Fires on Another Shore」(SEIZAN Gallery、New York)
2020       「高見基秀-腥物を座視する-」(SEIZAN GALLERY TOKYO 凸、Tokyo)
2021   「高見基秀 -三界の火宅を眺める-」(靖山画廊、東京)
 
主なグループ展
2019   「LANDSCAPE」(GALLERY TSUBAKI、東京)
2019   「FACE展2019 損保ジャパン日本興亜美術賞展」(東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館、東京)
2019     第三回「八色の森の美術展」(池田記念美術館、新潟)
2019   「私の中の村上春樹 Ⅲ」(ギャラリー枝香庵、東京)
2020     「八色の森の美術 スピンオフ展」(人形町ヴィジョンズ、東京 )
2020     「Catenations」(Tiger Strikes Asteroid、New York)
2020     「ON THIS SHORE」(SEIZAN Gallery、New York)
2020     「蟻のひと噛み」(靖山画廊・SEIZAN GALLERY TOKYO 凸、東京)
2021   「FACE 展 2021」(SOMPO 美術館、東京)
2021   「惑星-PLANETS-」(日本橋三越、東京)
2021   「JOKER」(靖山画廊、東京)
2022    「PASSION!!」(靖山画廊、東京)
        「絵画のゆくえ 2022」(SOMPO美術館、東京)
        「Idemitsu Art Award 2022 」(国立新美術館、東京)
2023   「Fluid Places」(SEIZAN Gallery、New York)
2023   「VOLTA New York」(Metropolitan Pavilion Events & Production Services、 New York)
 
受賞歴
2019     FACE展2019 損保ジャパン日本興亜美術賞展 入選
2021     FACE展2021 損保ジャパン日本興亜美術賞展 優秀賞
2022    Idemitsu Art Award 2022 木村絵理子審査員賞
 
その他
2015     挿画 MONKEY Volume 5 チャールズ・ディケンズ「眉に唾をつけて読むべき話」(Switch Publishing Co., Ltd. )
2021     装丁画 Josh Russell「King of the Animals」(LSU Press)
          挿画 MONKEY Volume 25 リック・バス「ミシシッピ」(Switch Publishing Co., Ltd. )

Works