この度ROD GALLERYでは木村俊幸の個展を開催いたします。
 
本展は木村俊幸にとってROD GALLERYでは初の展覧会です。
 
詳細は以下のとおり。
 


“ MATIM ”の活動はcontactという怪しげな冠をつけて現在27回目の展示(交信)となる。
 
ルームメイト、チェックメイト、ソウルメイトにアニメイト、果てはカロリーメイトに至るまでmateという言葉は常に何かと“ 同居 ”する。
 
mateを語源に編まれた造語“ MATIM ”は数年前までは発音すら定かではなかった。
 
マティム?そうではない、“ メイティム ”だと何度も英語圏の友人に説明してきたのも無謀な試みだが、遂には苦笑いと共に発音してくれた時には何故か不思議な安堵感が双方に広がったものだった。
 
近年では、イタリアのキッチン店、子供洋服、果ては名も知れぬミュージシャンの曲にまで及び、“ MATIM ”は言語として認識され始めている。
 
展覧会のタイトルとして “ 結界 ”という実に重々しいテーマを選んだのは、今ではゲームやアニメでは普通に使われる呪術用語であるだけでなく、今までの作品制作でどことなく、意識して英訳も実にバカバカしい響きでもあるからだ。
 
また、呪術の世界で解き明かすよりも、既に前作の作品に使っていた『玉暖簾 ,たまのれん』からの考察が決め手となった。
 
それは、偶然にも“ 結界 ”と同じ機能性を有していたのだ。
 
“ 向こうの空間を窺い知ることができる。そうでないものは結界とはいえない。下を潜るこ と,上を股ぐこと,間をすり抜けることができるのが重要な機能なのである。空間を区切っていながら,両空間 をとりもち,交流させているのが結界である。
『暖簾』その意と匠 / 北端信彦
 
白い壁に向かってブツブツ呟いたり、何かを訴えたり、何かのお告げを待つこと、この平面的な思考のある 居(虚)空間こそ、MATIMの入り口であり、ポータルではなかったのか。
 
然しながら 玉暖簾 そのものの歴史は期待を裏切るほどに非常に浅い。
 
一説では70年代に電子計算機の発達、つまりコンピューターの到来で、そろばん業者の経営が悪化、そろばん本体の機能“ 珠 ”(たま) の部分が余り、繋いで暖簾にしたという。
 
当然ながら“ 珠 ”になる前の“ 玉 ”であるというのが玉暖簾になるワケだが、私はそこにもMATIMの~都合の良い存在感~を感じざるを得ない。
 
だが、そろばん そのものの歴史はシュメール文明の 砂そろばん まで遡るとまことしやかに言われている。
 
つまりは、“ 結界 ”のtheme(テーマ)に至る為の呪術的なアプローチではなく、それこそ、嘗て母が台所の入り口にぶら下げたであろう、あの“ ジャラジャラしたモノ ”を拾い、アトリエに踏み込んだ時から、アトリエそのものにその“ 結界 ”が張られたと言ってもいいのかもしれない。
 
勿論、私はそれが、直ちに使用される素材ではない事は覚悟している。
 
それは、無口な同居人と住まうが如く月日は流れ、やがてそれは、像を結び、結界となる日を待ちわびている。
 
木村 俊幸


スピリチュアルバリアと聴いて連想するものは何だろう。
 
神社、霊山、儀式台、エクソシスト、、。
 
物質的な領域と未知なる領域は日常の延長線上にグラデーションのように続いている。
 
木村さんの作品はそうした未知なる領域を垣間見せてくれる。
 
道端で拾ってきたのれんを領域の仕切りに見立てたインスタレーション、同じく神社で拾ったどこかの少女の七五三の写真を使った作品、未知への好奇心がアートになり、新しい意味性を帯びてラジウムのように静かに発光し始める。
 
怖いけれども覗いてしまう、そんな“ のれん ”越しに漏れる光のなかに手を差し入れてみたい。

RODGALLERY ディレクター 藤田 つぐみ


 
▶︎展覧会名
MATIM 27th contact "Spiritual Barriers -結界-"
 
▶︎開催期間
2024.01.12(金) - 2024.01.29(月)
 
▶︎トークイベント
2024.01.12(金) 17:00〜
木村俊幸×藤田つぐみトークイベント
※詳細は随時WEBにてアップします。
 
▶︎アーティスト
木村 俊幸
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