この度RODGALLERYでは京都市立芸術大学出身という同じ基盤(BASE)を持つ内海紗英子、佐々木萌水、森山佐紀、山本真実江の4名でグループ展を行います。
 
花を生けるための花瓶(VASE)、水を満たすための甕、空洞を持つ形態はその用途を前提に作られてきました。
 
今回のグループ展では作品それぞれに物語や時間の旅が内在しており、用途を超えてそこに美しく在るだけで良い、と感じられるような存在感を持つものばかりです。
 
満ちていくのは作品と対峙するわたしたち自身かもしれません。
 
ぜひご高覧いただけると幸いに存じます。
 
詳細は以下のとおり。
 


近年AI技術が一般にも普及し、生活の一部となりつつある。
 
未来には代替可能な分野において仕事がなくなってしまうという予想がもうすでに未来ではなく現状のこととしてまた時代が変わりつつある最中にいる。
 
AI画像が絵画展で入賞するなど美術の世界にもその流れは届いており、そのなかであらためて手仕事に目を向ける人は少なくないと思われる。
 
まだ途上であるAI画像技術が時折見せる不自然さ、異質さは表面だけを真似、分別なくそれらしいものを提示してみせるところにある。
 
人の手と頭を通じて作りだしたものにも似たようなものは氾濫しているように感じる。
 
アートらしい何か、それっぽい構成で作られた付け焼き刃な絵やモノたち。
 
手仕事ならば全てが尊ぶべきものではないことを今回のグループ展では鑑賞者に思い出させてくれるだろう。
 
イミテーションでは出すことのできない " 気 " の入った作品群が並ぶ。
 
クリスチャンとしてキリスト教の題材を日本的な漆芸で繊細に表現する内海紗英子。
 
京都の高瀬川で採取した古い器などを金や漆で継ぎ、新しい形の作品に生まれ変わらせる佐々木萌水。
 
壺の形をその用途ではなく、覗き込む、見つめて映し出すという現象に焦点をあて概念的な壺を漆を用いて制作する森山佐紀。
 
土地に由来する紋様や自身の経験した光景を物語を紡ぐように陶芸で物質化する山本真実江。
 
4人の共通する部分は同じ京都市立芸術大学の出身者で京都を拠点に活動している点と、それ以上に"気"の充ちたホンモノであるという点にある。
 
簡単にイミテーションが作れる時代を迎え、作り手と鑑賞者の両者に現代における審美眼が問われている。
 
RODGALLERY ディレクター
藤田つぐみ
 


 
「めぐみ」をキーワードに、主に漆芸における加飾(装飾領域)での制作を行っている。
 
めぐみとは「人に祝福を与えられる要素」であると捉え、装飾領域を主とした作品とすることでその輝きを際立たせたいと考えている。

制作における装飾の文様やイメージは、自身が幼少期よりキリスト教会に通っていた経験から西洋的な流れを汲んだ雰囲気に影響を受けている。
 
内海 紗英子
 


 
過去から未来へ向かう人の営みや時間の連続性に焦点を当て、近年は京都市内を流れる川から採集した陶磁器片を漆で繋ぎ合わせた金継ぎや呼び継ぎなどの作品を制作する。
 
今回の展覧会では、京都市内の高瀬川から採集したカケラを漆で繋いだ器の作品の他、石から着想を得た作品も展示する。
 
佐々木 萌水
 


 
漆の積層を研ぎ出す過程で現れる模様に、時間と空間の概念を重ね、鑑賞者の記憶に深く働きかける作品を制作する。
 
漆の物質的特性を活かしつつ、個々の記憶や感覚に寄り添い、多層的なイメージを呼び起こす表現を探求している。
 
森山 佐紀
 


 
ドローイングや木版画、写真など様々な表現を行き来しながら、日々の繰り返しの中にある変化を陶に刻んでいる。
 
作ることと生きることの重なりや記憶、環境との関係性を探っている。
 
山本 真実江
 


▶︎展覧会名
「BASE / VASE」
 
▶︎開催期間
2025.6.6(金) - 6.23(月)
※会期中火-木曜休廊
※11:00 - 19:00まで
 
▶︎アーティスト
内海 紗英子(うつみ さえこ)
佐々木 萌水(ささき もえみ)
森山 佐紀(もりやま さき)
山本 真実江(やまもと まみえ)
※アーティスト名をクリックするとアーティストページに遷移します。


 
祝福のたまご「咲」
内海 紗英子
2024
漆 卵殻 銀粉 プラスチックケース
拭き漆
70×70×90mm
photo by Kazuo Fukunaga

 
高瀬川 水瓶
佐々木 萌水
2024
漆 高瀬川の磁器片 銀 錫 麻布 砥の粉
和紙 木 フェルト
110×100×180mm
photo by Takeru Koroda

 
self_counseling#5
森山 佐紀
2024
乾漆 螺鈿 卵殻
235×30×500mm
photo by Takeru Koroda

 
拍動
山本 真実江
2023
陶土
260×130×190mm
photo by Takeru Koroda